
先日、鉄骨造平屋建ての建物について「構造計算書を作成しない範囲で、構造的安全性の確認をしてほしい」というご依頼をいただきました。
このようなケースは、建築確認申請の規模において構造計算が不要とされる建物に対し、それでも「安全性に確信を持ちたい」という発注者様のご判断によるものです。
構造確認業務という呼び名ながら、内容は極めて曖昧で、事例も少なく、依頼主様自身も「何をどう確認してもらえるのか」を明確にされてはいませんでした。
前例の少ない、構造計算をしない業務に対し、当社は何をご提供したのか。この記事でご紹介できればと思います。
業務内容の紹介
案件概要
- 建物種別:鉄骨造・平屋建て
- 規模:建築確認申請上、構造計算書は不要
- 依頼者の要望:「計算書を作るほどではないが、構造的に安全か確認してほしい」
安全性を確認するために行うのが構造計算なのですが、費用の都合で構造計算業務は依頼できないという制約を提示されてしまいました。
古宮が行った内容:構造計算に頼らず構造安全性を確認
そこで、当社では以下の方針で対応しました。
- 耐震設計ルートの該当確認
- 建物に作用する荷重の概算
- 柱・梁など代表部材の断面に対して、逆算による安全性の確認
- 基礎の構造的妥当性の整理
- 手計算による検算も含めた、計算式の明示による信頼性確保
成果物としては、A4サイズで6ページ程度の構造確認書を作成。必要最小限かつ納得いただけるレベルの安全性の可視化に努めました。


プロフェッショナルとしての姿勢
先述の通り、依頼主からは「構造計算は不要(=費用を掛けられない)」という条件がありました。また、事例の提示を求められなかったことからも、こちらに大きな裁量が委ねられた仕事であったと言えます。
実は、同様の相談を受けた同業者の中には「事例がないとできない」と回答された方もいたと聞きました。
しかし私は、これを料理人が「レシピを見せてもらえれば調理します」と言っているのと同じようなことだと感じます。プロフェッショナルである以上、状況を読み取り、依頼主の意図を汲み、構造的合理性と安全性を担保できる提案をすることが当然の務めだと考えています。
このような案件では、単に「構造が成立しているか」だけではなく、依頼者の不安にどう向き合うかが問われます。
私は今後も、形式にとらわれず、実務者の視点で「現場の安心」を支える構造技術者であり続けたいと考えています。本件のような「前例のない構造確認」についても、臆することなく対応いたします。
「構造計算書は不要だけれど、設計の妥当性を確認したい」などのご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。